ども。張り替え番長のコバヤシモンドです。
いわゆる北欧家具によくみられますが、座面が紙ひも「ペーパーコード」で作られた椅子というのがあります。
長年使用しているYチェアのバッタもんリプロダクトなのですが、ペーパーコードの座面がだいぶダルダルに緩んでしまいました。
リプロダクトにしてはフレームなどは頑張って作られているのですが、ペーパーコードの編みはもともと不安な仕上がりのだったんですよね。
でも、プロにお任せすると張り替え代は1万円以上は普通にします。
で、守銭奴DIYヤーのコバヤシとしては
自分でいけるんじゃね?
とペーパーコードの張り替えにチャレンジすることにしました。本当に素人がうまくできるのでしょうか?
ペーパーコードを準備する
張り替えには、座面に使われる「ペーパーコード」を用意する必要があります。
ただの紙ひもじゃないの?
ペーパーコードは第一次大戦期に農業用ロープとして使われていた紙製のロープが、のちにイスに転用されるようになったものです。
といっても現在はただの紙ひもではなく、ロウを染み込ませて強化した特殊な紙ひもが座面用として使われています。
ペーパーコードの入手先
一般に需要のある品物ではないので、近所のお店で調達することは難しいでしょう。
やはり、専門のお店のネット通販を利用することになります。
主な調達先は
こちらの2店が信頼できます。
どのペーパーコードを選べばいいの?
一口にペーパーコードといっても結構種類があるものですが、
この条件を満たしていれば問題ないと思います。
「レースタイプ」はひもの表面がデコボコ。普通にイメージするロープのような表面です。
「アンレースタイプ」は表面がフラットな形状になっています。
コバヤシはオフコーポレーションさんで、
を買ったのですが、Yチェア一脚ぶんには少し足りなくて、追加注文しました。はじめから200mにしておけばよかった。ぐぬぬ…
編み方にもよるかもしれませんが、今回のやり方では足りなかったよ
次に機会があれば鯛工房さんの
を試してみたいです。
張り替えの準備
古いペーパーコードを解く
まずは古くなったペーパーコードをほどきながら、その構造を学習して再現しようと思いました。
が
Yチェアの座面は「封筒編み」と呼ばれる、文字通り封筒のような形に編まれているのですが
全く再現できる気がしねえ
どうなっているのか全然わからない複雑さ。なので、ほどきながら覚えるのを諦めてハサミでバッサリいっちゃいました。
フレームのメンテナンス
※必須の工程ではないです。
イスがきれいに木枠だけになったので、コレを機にフレームのメンテナンスを行いました。
少し緩んでいる接合部にボンドを注入し、クランプで締め付けます。
ちなみに木工用ボンドは「タイトボンド3」を使っています。
接着力、乾燥の速さ、耐水性という3拍子揃った最高のボンドです。乾いたあとは硬くなるのでヤスリがけもできるというのもポイント。
いわゆる普通の白い木工ボンドは柔らかいのでヤスリで削りにくいのです。
あとは本体のオイル塗装をリフィニッシュ。詳しくはこちらの記事をご覧ください。
ペーパーコードを編む
封筒編みと平面編み
「封筒編み」は始める前に挫折したコバヤシですが、初心者でも失敗が少ない「平面編み」でチャレンジすることにしました。コレならできるかも。
っていうかやらないと椅子が無いよ
「平面編み」は「鹿の子編み」とも呼ばれます。
以前は日本風の「鹿の子編み」の呼び名が主流でしたが、布地でいうもともとの鹿の子編みとはちょっと違うようなので最近はデンマークで呼ばれる「Plan weaving」の訳語である「平面編み」もしくはそのまま「プラン編み」が主流のようです。
Planは平面(Plane)てことかな?
具体的な編み方ですが、前述の鯛工房さんのペーパーコード編みのページを大いに参考にさせていただきました。
鯛工房さんのサイトは家具製作の知識も熱量もハンパなく、木工をたしなむ人のバイブルです。専門的なので中級者以上向けかもですが。
Yチェアに平面編みは邪道?
気になったのが、ネットで検索してもYチェアの平面張りはあまり作例が出てこないことです。張り替え業者でも「Yチェアの平面編みはお断り」というところも。
「スタンダードと違うからかな?」くらいに思っていましたが、やってみると単純に「Yチェアは平面張りがやりにくい」ことがわかりました。
まず問題はYチェアの座面の形状です。真四角でなく、台形をしているので素直にタテヨコまっすぐ編むと座面と枠の間に隙間が空いてしまいます。
そこで枠の傾斜に合わせてタテ糸も傾斜させることにしました。
「タテ糸」ではなく「タテ紐」かもしれませんが馴染みにくいので「タテ糸ヨコ糸」で通します。
具体的には、長い辺の捨て巻きを4、短い辺の捨て巻きを3とずらして調整することできれいな放射状のラインを作ろうと企みました。
実際はそんなにうまくいかなかったのですが。
前半:タテ糸を巻く
巻き始めです。まずはペーパーコード張り用のL字釘(ダニッシュネイル)を打ち、ペーパーコードの端を引っ掛けて固定します。
別に普通の釘で直接ペーパーコードを打って固定してもいいです。コバヤシはなんとなくダニッシュネイルというカッコいいものを使いたかっただけです。
ペーパーコードは適当な長さに切って、途中で結んで継ぎ足しながら使うことになります。
(100mを超えるコードを取り回しながら編みのは無理です。)
コードは8の字になるように指に巻きつけ、ある程度の塊にしておくと絡まずに引き出せるので便利です。
鯛工房さんのサイトをベースに編み始めます。
鯛工房さんのテキスト通りにやると、ザッと前側を全部巻いてから後ろを巻き始めるのがやりやすいとのことでした。
が、Yチェアのやりにくいところその2ですが、後ろの枠がかなり湾曲しているので一部を引っ掛けておいてもずれてしまうのではないか?と思い端から順に前、後ろと編んでいくことにしました。
終わってから考えるとずれても後で修正できるので、やっぱり書かれた通りにやればよかったかと…
でも思った通りにはいかないもので、何度も納得いかずほどいて修正しての繰り返しでした。
後半:ヨコ糸を編む
タテ糸に比べてヨコ糸は間隔の調整とかはありません。ひたすら上、下とタテ糸をくぐって進んでいきます。
が、果てしない作業。全く終わる気がしません。基本的にはずっと同じ作業の繰り返しになります。
自分は何のために生まれてきたのだろう…
と考えてしまうほどに黙々と作業を続けます。
計っていませんが、ここまでで7〜8時間でしょうか。この辺までくるとだんだんと達成感みたいなものも出てきます。
ていうか早く達成させてください。辛い。
平面編みは裏側も編むことになりますが、裏は重要ではないのでかなりラフに編んでいます。
座枠の内側に大量のダニッシュネイルを打ち、それにコードを引っ掛けて折り返すことで裏面を編まずに仕上げる方法もあります。
参考:鯛工房さん ペーパーコードの椅子張り 3:平面張り・プラン張り(2)
が、Yチェアは座枠の厚みがないためその方法は使えませんでした。
また、編みながらペーパーコードを継ぎ足す時は裏側で結ぶようにします。
誤算は、台形の座面に合わせてタテ糸を放射状にしたのですが、これだとヨコ糸が扇状になるため座面の後ろの方にかなりのすき間ができてしまうことです。
苦し紛れに「木枠ではなく端のタテ糸に引っ掛けて折り返す」というセオリーではない方法をとってすき間を埋めました。
この部分の強度は全然ないでしょうが、こんなに後ろの方に荷重はかからないですし見た目はなんとかサマになったかと。
で、一応完成です!
タテ糸の角度がおかしかったりすき間が目立つ部分があったりいろいろですが、素人でも張り替えることはできました。
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結論:ペーパーコードの張り替えは素人でも(一応)可能
というわけで、なんとかペーパーコードの張り替え自体は自分でも可能という結論に達しました。
自分でやろう!と言えるかというと
初めてやる素人がキレイに仕上げるのは多分無理です。すき間なくやったはずのところに編んでいるうちにすき間ができてきたり。慣れていないと計算通りにいかないことがたくさん出てきます。
そして膨大な時間がかかります。
なので、やるなら
この辺の条件を満たせる人ならやってみる価値はあるでしょう。
再認識。張り替え業者はすごい
のべ10時間以上はかけて(もっとかも)ペーパーコードの椅子を張り替えたわけですが、まず言えることは
1万円くらいでやってくれる業者コスパ良すぎィ
です。
材料代と人件費と利益を考えても、1万円でできるってすごいと思います。ていうかどんだけ仕事早いんでしょうか。1脚半日かかっても赤字になるような。
しかもコバヤシよりははるかにキレイに仕上がるはずです。
神ですか?ペーパーコード編み職人さんは。それとも神と紙をかけているのですか?ペーパーだけに。
こんなしょうもないことを言ってしまうのも張り替え業者の素晴らしさによるものです。コバヤシのせいにしないでください。
というわけで、キレイに直したい人は職人さんに任せましょうw
でも一回は自分でやってみると楽しいですよ!
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